男爵が書く

DDD、オブジェクト指向、技術書の感想など

XP祭り2021でカンバンとJIRAの話をしました

かれこれ4ヶ月ほど前のことになりますが、XP祭り2021にオンラインで参加していました。アジャイル開発の本を読んだり現場での実践は数年前からやっていたのですが、このジャンルのカンファレンスに参加するのは初めてでした。

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自分が最初にアジャイルに触れたのは、同僚の勧めで『アジャイルサムライ』を読んだのがきっかけだったと記憶しています。それまでの現場ではなんとなーく見積もりをして計画を立て、要求が膨らんだり作業が思うように進まなくて炎上するということを繰り返していました。そんな中、「スコープ・予算・時間・品質のトレードオフ・スライダー」や「ベロシティを計測して根拠のある計画を立てる」といった考え方に感銘を受けたのを覚えています。

その後はトム・デマルコの『デッドライン』や『ピープルウェア』、『熊とワルツを』、スティーブ・マコネルの『ソフトウェア見積もり』など、どちらかというと古典的なプロジェクトマネジメントの本を好んで読んでいました。この頃になると、プロジェクトマネジメントにも見積もりにもソフトウェア開発の歴史の中で蓄積されてきた技術が確かに存在していることがわかってきました。と同時に、なぜ世の開発現場はそのような技術や知見を無視した運営がなされているのかという、ある種怒りにも近い感情が湧き上がってきました。せめて自分の周りの状況だけでも変えるためには、自ら学び、チームを巻き込んで実践していく他ありません。

今回の発表ではアジャイルというよりはリーン寄りの話をしました。参考文献は『クリティカルチェーン』、『カンバン ソフトウェア開発の変革』、『リーン開発の現場』あたりの書籍です。エリヤフ・ゴールドラットの提唱した制約理論は、「全員が頑張ればたくさんの機能を素早く作れる」という素朴な思い込みに対する痛烈なアンチテーゼです。ソフトウェア開発において、プレッシャーや頑張りで解決できる問題はほとんどありません。重要なのはボトルネックを認識し、それを最大限活用することです。改善のサイクルはそこから始まります。まずは「どの工程にどれだけ時間をかけているのか」「何をしたらどう変わったのか」を定量的に測っていく必要があります。

自分の現場では開発のアクティビティを記録するためにJIRA Softwareを使いました。チケットの階層化やステータス毎の滞在時間、ワークフローの制御など、チームの動きをデータ化するのに便利な仕組みが揃っています。クラシックと次世代の二つのバージョンが並列で開発されていて、次世代のほうの機能がまだ不足しがちではありますが、Google SheetsやGAS(Google Apps Script)を組み合わせればなんとでもなります。

speakerdeck.com

ありがたいことにアトラシアン株式会社様の公式アカウントに拾っていただきました。

カンファレンス全体としても興味深いテーマが多く、リアルタイムでは追いきれなかったのですが、参加者にはあとで録画を公開して頂けたので少しずつ観ていました。個人的に特に印象深かったのは、伊藤浩一さんのこちらのセッションです。

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かつて『ソフトウェア見積もり』を読んだときに受けた衝撃が甦るようなセッションでした。現場でリーダーやマネージャーと名のつくロールの人全員に知っておいてほしい内容でした。

今回はリモート開催だからこそ気軽に北海道から参加できたのですが、やはり元々の知り合い以外の方と交流するには物理の懇親会で輪に入っていくのが最強だと思います。情勢が落ち着いて物理開催が実現されたあかつきには、是非また参加したいと思います。

改めてスタッフのみなさん、協賛の方々、20年もの間XPのコミュニティを維持してこられた人たちに感謝します。

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